アーサーペディア
アーサー王大百科

パーシヴァル

名称の由来

ウェールズの英雄ペレディールは、ウェールズ以外の土地ではパーシヴァルと呼ばれている。パーシヴァルという名前はクレティアンによって創案されたようである。(フランス語ではペルスヴァル、ドイツ語ではパルツィファルとなるが、ここではパーシヴァルに統一する)。

人物紹介

クレティアンによれば、パーシヴァルは騎士道のことなど知ってもらいたくないという願いを抱いた母親によって森のなかで育てられたが、あるとき数人の騎士の姿を目にしたのがきっかけで、アーサーの宮廷に行き、騎士になろうと決心した。母親が貴婦人から口づけか宝石を手に入れるよう命じたので、パーシヴァルは天幕(テント)に寝ていた少女を見つけると、口づけをして、その指輪をそっと持ち去った。アーサーの宮廷に到着すると、「赤い騎士」が大事な盃を盗んだことがわかったので、騎士を追跡して殺した。

その後パーシヴァルはゴルヌマント・デ・ゴールトという老いた騎士のもとで暮らすこととなる。パーシヴァルに騎士道を教え、さらに騎士に叙したのはこのゴルヌマントであった。

パーシヴァル聖杯

遍歴するパーシヴァルはあるときブランシュフルールの城にやってきた。城はクラマデュース王によって包囲攻撃を受けている。パーシヴァルはブランシュフルールを愛するようになり、クラマデュースを一騎打ちで敗った。母に会いに行こうとする道すがら、釣りをしていたある人物によって導かれるがままに城に行きつくと、そこには、老人が寝椅子に横たわっており、パーシヴァルに剣をくれた。「聖杯の行列」が行なわれたが、パーシヴァルは「聖杯」とは何か、また、それは誰のために役立つのかという質問をしなかった。翌朝目覚めると、城は無人で、パーシヴァルは命からがら逃げ出すのがやっとであった。剣はばらばらに折れてしまっていた。いとこに出会うと、例の質問をすべきであったと言われ、剣をトレビュシェットのところに持って行くよう教わった。

パーシヴァルは、以前天幕(テント)のなかで口づけをした女性に再び出会う。その夫は妻の指輪をもっているパーシヴァルと妻の関係を怪しんで一騎討となったが、パーシヴァルは夫をうち負かしてしまった。パーシヴァルは神のことをすっかり忘れてしまい、その期間は5年のながきにわたったが、叔父にあたる隠者がパーシヴァルの罪障を消滅させてくれた。

と、クレティアンの作品はここのところで途切れているが、マネシエ(参考文献リストの「トロワ続編」参照)によれば、パーシヴァルは「聖杯の城」に戻り、例の質問をした。「漁人(いさなとり)の王」はその弟ゴオン・デゼールを殺した剣の破片が飛び散り、それによって負傷したのだということ、その仇討ちが完了しないと傷が癒えないであろうことを、パーシヴァルは知った。そこでパーシヴァルは犯人を殺し、王は快復した。

異説

英語で書かれた『ウェールズのサー・パーシヴァル(Sir Perceval of Galles)』では、パーシヴァルの崇拝する女性はルファムアという名で、パーシヴァルは最期には十字軍に加わって戦死することになっている。『ディド・ペルスヴァル』では、「富める漁人」がパーシヴァルに、イエスがアリマタヤのヨセフ に告げた秘密の言葉を教える。『ペレディール(Peredul)』では、城で行なわれる行列に、生首を載せた血だらけの盆が登場する。この生首はいとこのものだと後に判明し、ペレディールは復讐しなければならなくなる。この物語では主人公がアファンクと戦う。流布本版『探求』およびマロリーでは、パーシヴァルの役割はかなりの部分がガラハッドに移されている。

マロリーでは、パーシヴァルの父親はペリノアである。ヴォルフラムでは、ガームレットが父親とされる。同じくヴォルフラムでは、母はヘルツェロイデ、妹がディンドラーネ、息子たちとしてカルダイツ、ローエングリンなどが登場する。『ウェールズのサー・パーシヴァル』では、母親はアーサーの姉アチェフルアという名で、同名である父親のパーシヴァルは、何年も以前に「赤い騎士」によって殺されたという設定である。『ペルレスヴォ』では父親はジュラン、母親はイグレと呼ばれている。これに対してゲルベールは母はフィロゾフィーネ、父はガレス・リ・コースと呼んでいる。『ペレディール』では父親の名はエフラウグとなっている。また、『円卓』では、妹がアグレスティツィアと呼ばれている。パーシヴァルガラハッドの死後、1年以上たってから亡くなったとされる。

マザダンがアーサーの曾祖父としてあげられることがあるので、パーシヴァルアーサーの遠いいとこということになる。

参照

24人の騎士」「白鹿

図説アーサー王伝説事典

索引

協力

  • 原書房
  • 東京大学大学院
    総合文化研究科 教授
    山本史郎