アーサーの父。アンブロシウスの弟で、この兄を継いでブリテン王となった。イグレーヌに思い焦れ、その夫のゴロアに戦争をしかける。戦いのさなか、マーリンが魔法によりウーゼルをゴロアの似姿に変え、この姿でイグレーヌを訪れたウーゼルはアーサーを受胎させる。ゴロアが死ぬと、ウーゼルはイグレーヌを妃にした。ウーゼルはやがて戦死し、ストンヘンジに埋葬された。
『散文トリスタン』では、かつてウーゼルを負かし、城を建てさせたアルガンの妻に、ウーゼルが恋したと述べられている。『プティ・ブリュ』では、ウェストモーランド(現在ではカンブリア州の一部)で蛇=竜と戦ったさまが描かれている。ヘンリー・オブ・ハンティングドンはウーゼルをアーサーの兄弟と呼ぶが、カンブリアの伝承では巨人であったとされる。カンブリアでは、ウーゼルはマーラスタングに王国をつくり、イーデン川の流れをかえて、城をめぐる濠にしようとしたと伝えられている。
ウーゼルがこのようにさまざまの顔をもつ、焦点の定まらない人物となったのは、ウェールズ語の「アルスュール・マブ・ウーセル(Arthur mab Uther)」という言い回しを誤解したせいだという説がある。この言い回しは「ウーゼルの息子アーサー」と取られているが、じつは「恐ろしい息子(すなわち若者ということ)アーサー」という意味なのだ。とはいえ、こうしたこととは別に、ウーゼルに関する独自の伝承も存在する。