傑作詩である『サー・ガウェインと緑の騎士』(14世紀)およびそれをもとにした作品『緑の騎士』(1500年ごろ)の登場人物。緑の騎士がアーサーの宮廷の広間に入ってきて、どの騎士でもよいから、互いに首を斬り合おうという。ガウェインがこれに同意し、先に斬ることを許される。ガウェインは首を切り落とすが、緑の騎士は平然として首をひろいあげ、こんどは自分が斬る番だから、元旦の朝自分に会いにこいと言い残して去る。
約束を果たすべく旅にでたガウェインは、ある領主のもとに宿る。ガウェインのいる間は、昼間にそれぞれが得たものを夕方に交換しようという約束が、主人との間に成立する。
第1日目。主人が狩りに出ている間にガウェインはその妻から口づけを得たので、約束にしたがってガウェインは主人に口づけをする。2日目には、2度(ふたたび)の口づけを得たので、ガウェインはふたたびこれを主人に伝える。3日目には3度(みたび)の口づけと、それを身にまとっていれば傷つかないという緑色をした魔法の紗(レース)を得たが、ガウェインは口づけのみを主人に伝える。
領主の城を去り、約束した「緑の礼拝堂(チャペル)」に着いた。剣の一撃を受けようと、ガウェインは膝まずく。「緑の騎士」は3度剣を振り降ろすが、最初の2度は首に触れるところまでおろさず、3度目は首に掠り傷をおわせただけであった。
「緑の騎士」は泊めてもらった城の領主であることが判明、もしも紗(レース)のことを正直に述べていたなら、たとえわずかでも傷を負わせることはなかったろうと言明した。
「緑の騎士」の本名はベルティラックといい、その城はハットンと呼ばれる。この物語は、ク・ロイが「緑の騎士」、クーフリンがガウェインの役割を演じるアイルランドの物語に酷似している。「緑の男」なる野人伝説がある。宿屋の看板によく描かれ、祭のさいなどにはその像が市民によって担がれたものだが、これは「緑の騎士」と同根かもしれない。